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シリーズの勝者なし ワールドラグビーにはマイナスとなった

ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズのニュージーランドツアーは、土曜の夜イーデンパークにて、人々の心を奪う、そして苦痛な程もどかしい結末を迎えた。

ドラマがたくさんあったシリーズ最終決戦は、接戦の末、15-15ドローで終了した。

引き分けという中途半端な結果に終わってしまい、ワールドラグビーにとっては、これ以上無視できないほどルールに問題があったと言えるだろう。

シリーズについてオールブラックスのコーチ、スティーブ・ハンセンが「これでは少しも面白味がない」と評価し、両チームが納得のいかない結末に終わった。

レフリーのロマン・ポワトの行動は、厳しい審査の対象となり、彼の試合終了直前の判定は、今でもなおソーシャルメディアは賛否両論が繰り広げられている。

ゲームは78分、ライオンズ、オーウェン・ファレルのペナルティによって同点となり、観衆にも緊張感がはしりました。

オールブラックスのボーデン・バレットは、高く滞空時間の長いリスタートキックに想いを託し最後の賭けに出た。オールブラックスのキャプテン、キアラン・リードは、ライオンズのフルバック、リアム・ウィリアムズとそのボールを争ったが、両者ともボールを獲得することはできなかった。

ボールはこのウェールズ出身選手(リアム・ウィリアムズ)に当たり前に(オールブラックス側に)バウンドしてしまい、リアム・ウィリアムズの前に立っていたライオンズのフッカー、ケン・オーウェンスが手を出しボール触ってしまった。そしてその反則を認めるかのように両手を上に挙げ、後ろに下がったのだ。

オールブラックスのセンター、アントン・レイナートブラウンは、その転がっていたボールを拾ってゴールラインへと前進し、二つのタックルを退けたが、ポワトのホイッスルによってそれを中断されることとなった。

レフリーは、バレットが不調だとしても、自信を持ってキックを決められるであろう、ライオンズのゴールポストから30メートルもない地点でペナルティを吹いたのである。

ポワトの判断はシンプルで、競技規則11.7、「ノックオン後のオフサイド」に沿ったものであるように見えた。

「プレーヤーがノックオンしたボールを、オフサイドの位置にある味方のプレーヤーがプレーしたとき、そのプレーで相手側から利益を奪った場合にはオフサイドの罰を科す。罰:ペナルティーキック」

 

しかし、キャプテンのサム・ウォーバートンを始めとするライオンズの選手達は、この判定に驚いてなのかもしくは、不信感なのか、状況の解明を試みるかのように、すぐには後ろに下がらなかった。

このライオンズのキャプテンの行動は、最終戦の試合結果に影響を及ぼすことができたでしょう。もしウォーバートンが後退し、このジャッジを受け入れていたとしたら、ポワト・レフリーはこの彼の最初の判断に関して、一切の疑念を抱くことはなかったかも知れない。

この行動によって、ポワトはさらに考える時間を与えられ、その結果、ジョージ・アユブにテレビジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)で見直しすることを要求することになったのである。

この状況の場合、ワールドラグビープロトコルではTMOによる判定を依頼できるのは危険なプレーのみです。現在のルールではTMOによる判定は以下の状況のみなのです。

•インゴールでのトライまたはタッチダウンのためのグラウンディングを判定、そして/またはプレーヤーがボールに触れていたか、またはグラウンディング前にタッチに出たかを判定する

•ゴールキックが成功したかを判定する

•トライをしようとする、またはトライの前に反則があったかを確認する(反則とは、トライの2フェーズ以内に限る)

•反則の可能性のある危険なプレーがあったかを考察する

 

 

アユブ及び、アシスタントレフェリーのヤコ・ペイパーとの再確認の末、ポワトは自分自身の最初の判断は正しかったと納得したかに見え、反則のあった位置へと戻り始めた。

しかし、ピッチの反対側でタッチラインを担当するアシスタントレフェリー、ジェロ-ム・ガルセスは、明らかに納得してはおらず、ラジオリンクを通してポワトに連絡を取っているようだった。

私達はポワトが「はい、ジェロ-ム?」と、その問いに答える声をマイクで拾っていた。しかし、この状況に関するガルセスの見解を彼の口から聞くことは              できなかったのである。

そして、ポワトがキャプテンのウォ-バートンとリードを呼び、ポワトの考え       直した新たな判断を説明する際に、ガルセスとのやり取りが明らかに重要なもので    あったことが判明した。

ここで重要なのが、ポワトにとって英語は第二言語で、両キャプテンに、これが偶然のオフサイドと判定することを曖昧な英語で説明したということである。

これによりオールブラックスは、ペナルティに代わりスクラムの権利を取得した。キアラン・リードはレフリーが間違いであることを説得しようとしたが失敗に       終わり、驚きを隠せない様子であった。

競技規則、特に、11.6aに定められる「偶然のオフサイド」は以下の通りである。

 

「オフサイドにあるプレーヤーが、やむなくボールまたはボールキャリア-に触れた場合は、偶然のオフサイドである。そのプレーヤー側が利益を得なければプレーは続行する。そのプレーヤー側が利益を得た場合は、スクラムを組み相手側が投入する。」

 

ガルセスは、ポワトにたった20秒間で、判定を覆させるだけでなく、試合の行方とラグビーユニオンの歴史をも変えうる、どのような言葉を放ったのだろうか。

私達はただ推測することしかできませんが、オーウェンスにボールが当たったのは避けられないことだった、というガルセスの考えをポワトに伝えたのでしょう。

明らかな問題点は、この競技規則が今回の事例において、両端の意味に解釈できることであり、これはワールドラグビーによる早急な改善が求められるところである。

特に「競技規則とその有効性の監視」を任されるラグビー委員会は、今後また注目を浴びるような問題が起こる前に、その防衛策に乗り出すべきである。

2015年ワールドカップで、オーストラリアがスコットランドに勝利した時のレフリー、クレイグ・ジュベールの、類似したケースを覚えているのではないだろうか。

驚くほど競争的なスポーツ界の中で、ラグビーユニオンはこのような曖昧なガイドラインを直していかなければ、現存するファンの興味をなくし、新たなサポーター、選手、スポンサーや観戦者を集める努力が無駄になるでしょう。

今回の試合はポワトの再考による影響を強く受けたと感じるだろう。ポワトは試合を決定づけるような判定をする役割を担うことは望んでいなかったにも関わらず、結果的には大きな影響を与えるものとなってしまった。

もしもこれが、この試合の最初の1分だったなら、ポワトは同じ判定を下したのか、またTMOを使用したのか?

疑問はそれだけではありません。

あの時レイナートブラウンが決勝点となるトライを決める可能性があったのに、なぜアドバンテージを与えなかったのか?

オーウェンスはボールを持って「プレー」したのか、それとも単に「触れた」だけなのか?

その他にも、リスタートキック時、リードはオフサイドであったのにも関わらずペナルティとならなかったことや、ウィリアムズと空中で接触していたのに、同じようにペナルティにならなかったことには疑問が残る。

ポワトの最終決断後、オールブラックスは再度判定を受け入れ、試合を続行した。その後2回のスクラムの組み直しがあり、オールブラックスの最後の攻めがライオンズに押しつぶされた後、フルタイムとなったのです。

ポワトのフルタイムを知らせるホイッスルが必要以上に時間を要し、選手及び観客に混乱が生じた。

オールブラックスは、彼らの名誉において、この結論にこだわることを拒み、ヘッドコーチのスティーブ・ハンセンとキャプテンのリードは、最後のこのプレーによって今回のシリーズが評価されるべきではなく、これは彼らのチームの問題点であることに言及した。

オールブラックスは、シリーズ中、合計たった3分しかライオンズが点数的にリードを許さなかった。しかし、ライオンズの早いラインスピード・ディフェンスによる、強大なプレッシャーの中で繰り返されたオールブラックスのボールさばきの    ミスは、最終結果に影響を与えた。

オールブラックスのコーチであるハンセンの苛立ちを露わにしたのは、試合直後の一時のみで、その後は驚くことに、ポワトや競技役員に対し、同情こそすれ軽蔑などはしなかったのである。

 

「オフサイドであるにしろないにしろ、もし皆がオフサイドだというのなら、それはオフサイドなのだろう。     しかし、この件には解釈の道が多くありすぎる。」と彼は述べた。

 

「あれはレフリーのミスではなく規則の問題で、ゲームを運営する者は、もっとシンプルにすべきか?ということを自身に問いかける必要がある。もし私が答えるならば、“そうすべきだ”と言いたい。」

 

これは、唯一、全員が同意できることだろう。